
クレジットカードの発行において気になるのが「審査」。
多くが謎に包まれているだけに、さまざまな噂も実しやかに囁かれています。
そこで今回は、最近までクレジットカード会社の入会審査に携わっていた方に匿名インタビューをさせてもらいました。
かなり興味深いことも聞けたので、是非読んでみてください。
クレジットカードの入会審査の実態が薄っすらと見えてくると思いますよ!
目次
クレジットカードの審査業務の流れって?
──Yさん、本日はよろしくお願いします。回答可否に関わらず、「クレジットカードの審査について気になること」をお聞きできればと思います。まずは簡単なご経歴を教えてください。
大学卒業後、2018年までクレジットカード会社にて入会審査業務に携わっておりました。現在は別部署で活動しています。よろしくお願いします。
入会審査の流れ
──早速いろいろお聞きしていきたいと思います。まずはクレジットカードの入会審査の流れを教えてください。
入会審査は概ね次のような流れで行ないます。
- 申し込み情報のデータ化(紙申し込みの場合)
- 機械による自動審査
- 目視審査に流れてきた申込を担当者別に振り分けて審査
- 承認&発行
オンライン入会の場合は②からなので、データ化の部分が簡略化されてよりスピーディになります。
──私たち申込者側からしても、最近はスマホやPCで気軽にオンライン申し込みができるので助かります。インターネットであれば申込フォームに記載した内容が既にデータなので、そのまま機械審査ができる…と。スピード発行できる券種が増えているのもその流れなんですね。
機械審査のあとに目視はあるの?
──機械による自動審査のあとは、結局は担当者が目視で審査を行なうんでしょうか?
いえ、自動審査で不備なく承認となれば目視審査には落ちてきません。その場合はそのまま承認&発行となります。
──なるほど…自動審査で判断しきれない場合にのみ、人間による目視の審査になるということですね。では機械審査によって一発で否決、となるケースはどんな場合ですか?
反社会的勢力に該当すると判断されれば一発でアウトですね。他にも、外部信用情報のネガティブチェックでひっかかると否決になります。
──やはりCICやJICCといった個人信用情報機関に金融事故情報があると、否決になってしまうんですね。クレヒスの重要性がよく分かりました。
──昔に比べてかなり減ってきていると思いますが、本人確認や職場の在籍確認をするのはどんなケースの場合ですか?
外部信用情報と内容が異なる場合や、外部信用情報機関に何も情報が登録されていない場合に在籍確認を行なうことがあります。
──いわゆるスーパーホワイトという状態ですね。転職や転居等の内容が外部信用情報に登録されていなかった場合も、たしかに確認する必要がありますよね。
クレジットカードの審査が有利に?○○の真相
──次は「クレジットカードの審査が有利になる」と巷で噂される事柄について聞かせてください。
審査内容に関しては社外秘事項も多いですが、お答えできる範囲で回答させていただきます。
リボ払いの選択は審査に影響する?
──まず、リボ払いについて。リボ払いは金利収入があるので、カード会社にとって収益性が高いですよね。ズバリ、申し込み時に「リボ払い」を選択すると入会審査に通りやすくなることはあるんでしょうか?
リボ払いを選択しても、審査に有利にはたらくことはありません。あくまでも「当人に与信が可能か」という目線で審査は行われているので、収益性が高そうな申込者を優遇するようなことはしていません。
キャッシング枠をゼロにすると有利になる?
──そうなると、キャッシング枠をゼロにすると審査が有利になる、というのも正しくないのでしょうか?
申し込み時にキャッシング枠をゼロにしたからといって、不承認が承認に覆ることはありません。ただ、審査の早期化という観点からすると有利にはたらくと言えます。
キャッシング枠をつけると、貸金契約に関わる書面のやり取りをする必要性も生じるため、通常のショッピング利用のみの場合よりも3営業日以上カード発送までにかかる期間が長くなってしまいます。
──なるほど…たとえばキャッシング枠ありで即日発行できるアコムのACマスターカードなどは、ちょっと異端な存在なんですね。でも確かに、自動契約機(むじんくん)でも貸金契約を含む複数枚の書面を交わした記憶があります。
入会キャンペーン中は審査は甘くなる?
──多くのクレジットカードは、期間を区切って入会キャンペーンを行なっていますよね。なるべく申込者を増やしたいはずですが、キャンペーン期間中は審査が通りやすくなることってあるんですか?
キャンペーン中でも、審査を甘くするといったことはありません。あくまで通常どおり審査を行ないます。
項目ごとのスコアリング内容は…
──申し込み時に「固定回線の電話番号がある、居住年数が長い」といったことは審査のスコアリングに影響しますか?
申し訳ありませんが回答できません。
クレジットカードの審査には「グレーゾーン」が存在?
クレジットカードの入会審査で「ギリギリ否決」「ギリギリ可決」のラインはあるはず。いわゆる温情発行についてもズバリ聞いてみました。
温情発行は存在する?
──自動審査→目視審査があるということは、「微妙なライン」という状態もあるということだと思います。そうなると、温情発行というのも存在するんでしょうか?
存在します。審査不承認者が黒、承認者を白とすると、グレーゾーンの人は一定数います。このグレーゾーンの層にカードを発行することはカード会社にとってリスクとなりますが、実は以下のようなメリットもあります。
- より多くの層にカード利用をしてもらえるため、収益が増える
- グレーゾーン者の利用状況をモニタリングすることで、審査精度を向上できる
グレーゾーンの幅を狭くし、収益を上げることはカード会社の審査部門のミッションの1つです。そのため、いわゆる温情発行を行ない、収益を増やしつつ今後の審査基準をチューニングしていきます。
──つまり、スコアリングの結果「ギリギリ承認」というケースもあるということですね。数カ月に再申し込みしたら審査に通ったというケースが多いのも合点がいきます。
難易度は券種によって異なる
──そうなると券種によって社内で明確に「承認/非承認のライン」が異なるので、グレーゾーンの幅も異なる、という認識で合っているんでしょうか?
はい、仰る通りです。
──券種ごとに難易度が異なり、「あのカードは審査落ちしたけど、こっちのカードなら通った」ということが多いのも頷けますね。しかもカード会社ごとにスキームやグレーゾーンの扱い方が違えば、通りやすさに差が出るのは当然かもしれません。
気になるクレジットカードの審査のあれこれ
──安定収入がないフリーターの方や専業主婦(主夫)の方は、一般的に審査に通りづらいと言われていますよね。あるいは未成年者や学生など少し特殊な属性の方もいます。そのあたりの審査事情について聞かせてください。
未成年者の審査は”親が対象”という噂は本当?
──クレジットカード申し込み資格の最低年齢は「18歳以上(高校生を除く)」ですよね。つまり、※未成年もいる。都市伝説的に「未成年のクレジットカード審査は親が対象になる」と言われることもありますが、これは事実なんでしょうか?
※2022年4月1日より、未成年は20歳から18歳に引き下げられました。こちらはインタビュー当時の内容となります。
家族カードの場合は親が対象ですが、そうでない場合はあくまで「未成年者本人に対して」審査を行ないます。
ご存知のとおりクレジットカードの入会審査では、指定信用機関が保有する外部信用情報(個人の氏名や住所、勤務先、年収、クレジットやローン等の延滞情報等)を参考にしています。
──未成年者の場合も申込者本人の信用情報を見るということでしょうか?
指定信用機関が保有する外部信用情報は目的外利用が禁止されています。ここでいう目的とは「本人に対し与信審査をすること」。
当人の与信審査のために他人の情報を参考にすることは目的外利用に当てはまる、認められていません。そのため、未成年の申込者についても親族の情報ではなく、本人の情報のみを参考にしています。
──なるほど…未成年の場合であってもあくまで「申込者本人に対して審査が行なわれる」、ということですね。
学生よりフリーターの方が通りづらい?
──そうなると、学生がフリーターよりも比較的通りやすいのは、「学生が親の庇護下にあること」は(少なくとも信用情報的には)関係がなさそうに思えます。それでも学生の方が通りやすいのはどういった理由なんですか?
そもそも学生向けカードは比較的低与信枠ということもありますが、「安定的な収入が得られない理由に妥当性があるかどうか」という観点から、フリーターの方は承認率は低くなってしまいます。
──かなり納得できます。それで言えば、たしかに学生であれば安定的な収入がない理由に妥当性がありますね。
専業主婦は配偶者の年収が関係あり?
──同じように、専業主婦の方の場合。安定収入がないことの妥当性はあると思いますが、夫の年収や就労状況は関係ないのでしょうか?
たしかに外部信用情報の利用は「申込者本人にする与信審査」ですが、世帯年収は当人の情報に当てはまります。つまり、配偶者の年収も間接的に関わってきますね。
──そういう意味では、クレジットカードの審査においては属性的に学生と通ずるものがありそうですね。本人のクレヒスが問題ないのは前提ですが、一般的な世帯年収があれば選べるカードも比較的多そうです。
社内クレヒスを積むと有利になる?
──CICやJICCといった個人新情報機関が保有する情報とは別に、社内でも情報は管理されていると思います。いわゆる社内クレヒスがポジティブである場合、たとえば上位カード発行の際に審査で有利にはたらくこともありますか?
審査に関して言えば、ポジティブな情報が有利に働くというよりは、目立ってネガティブなクレヒスがなければ審査に通る、という言い方のほうが正しいですね。
──本当に重要なのはクレジットカードの審査に通った後、とも言えますよね。健全なクレヒスを積めるよう、無理なく計画的に利用していきたいですね。
途上与信管理の頻度はどのくらい?
──カード会社はクレジットカード発行後も定期的に与信管理をしていますよね。その頻度ってどの程度のものなんでしょうか?
基本的に3ヶ月に1回、途上与信審査をしています。一部、利用残高が基準額を超えた人は1ヶ月に1回、途上与信をしていますね。
──Yさん、本日はありがとうございました。大変貴重なお話を伺うことができました。
入会審査にまつわるインタビューまとめ
このページでは、元クレジットカード会社の入会審査関係者へのインタビューをまとめました。
ファイナンシャルプラス編集部としては、すこし意外な事実も多かった印象でした。
要点をまとめておきましょう。
- WEB申込は自動審査なので早い
- 自動審査で引っかかると目視の審査に
- 反社会的勢力の疑い、信用情報のネガチェックで引っかかると一発で否決
- 承認/不承認は券種ごとに明確な条件がある
- 承認/不承認の間にはグレーゾーンがあり、温情発行も存在する
- 申込時にリボ払いを選択しても審査は有利にならない
- キャッシング枠をゼロにすると審査の早期化という観点で有利にはたらく
- 入会キャンペーン中でも審査が甘くなることはない
- 未成年者の審査でも、対象はあくまで親ではなく本人
- フリーターは「安定収入が得られない理由に妥当性があるか」という観点で承認率は低め
- 専業主婦の方は世帯年収、つまり配偶者の年収も関わってくる
- 途上与信管理は3ヶ月に1回、利用残高が目立つ人は1ヶ月に1回
細かな部分はカード会社によって異なる場合もありますが、与信という仕組み上、概ね共通することは多いでしょう。
残念ながら審査のスコアリング内容は聞けませんでしたが、クレヒスの重要性も浮き彫りになりましたね。
クレジットカードの利用履歴は信用情報として残ります。審査に通ったとしても、次なる審査はもう始まっていると言っても過言ではありません。クレジットカードは日々計画的に、賢く利用しましょう!