
自己破産についてインターネット上で検索した際、破産者マップの存在に気が付いた方はいませんか?
自己破産すると、破産者マップにより周囲にバレてしまう可能性がある!?
今回は破産者マップについて分かりやすく解説していくため、気になる方は参考にしてください。
目次
破産者マップとは?
破産者マップとは、破産者の名前や住所などのデータを公開するサイトのことです。
破産者データを容易に閲覧できるため、プライバシーの侵害ではないかと問題になりました。
破産者の情報がGoogleマップ上に!?
破産者マップではGoogleマップを活用しており、
Googleマップ上のピンを押すと、該当する破産者の名前や住所などが表示される仕組みです。
2018年12月頃に破産者マップの存在が確認されています。
当初は10年分、後に3年分の破産者データが公開されました。
破産者マップの目的は?
破産者マップではなぜインターネット上に破産者データを公開したのでしょうか。
破産者マップ係長を名乗る人物のツイッターによると、以下の目的で破産者データを公開したと考えられます。
- データの持っている本質的な価値に近づけたい
- データに誰もが自由にアクセスできる国になってほしい
- データに基づいて物事を判断する国になってほしい
破産者マップ係長のツイッターには、困っている人を助けたいといったツイートも見られます。
破産者マップを見た人が近くに住む破産者を助けることを期待し、破産者データを公開しました。
破産者マップで詐欺被害が発生
破産者マップでは、運営者の目的と違う使われ方で詐欺被害が発生しています。
破産者マップでは破産者データの削除申請が可能です。(名前や住所、自己破産の理由やその後の生活などを伝え、本人確認書類を提出)
しかし、削除は有料であると言い、金銭を払わせようとする者が出てきました。
破産者マップ係長はツイッター上で金銭を支払いしないようにとツイートしています。
そもそも自己破産とは?3種類の方法がある!
自己破産は以下のメリットがある裁判手続です。
- 多額な借金でもゼロになる
- 強制執行を回避できる
- 自由財産は手元に残せる
自己破産が認められると、借金の支払いが免除されます。自己破産後、多額な借金返済に悩まされる心配はありません。
厳しい取り立てからも解放されるのが自己破産のメリットの一つです。
借金を長期間滞納すると、強制執行(給与差し押さえなど)のリスクが生じます。
給与の場合、原則手取り4分の1が差し押さえの対象です。たとえば、手取りの月給20万円の方は5万円が差し押さえされます。
会社側に自己破産を理由とした解雇は認められていませんが、給与差し押さえの事実が知られると会社に居づらくなる恐れがあります。しかし、自己破産の手続開始後であれば、強制執行の回避が可能です。
自己破産すると赤い札を貼られて、何もかも差し押さえされるイメージを持っている方は多いでしょう。
しかし、自己破産しても以下のような自由財産であれば手元に残せます。
- 99万円以下の現金
- 差押禁止財産(生活に必要な衣服や寝具、家具、台所用具など)
- 破産開始決定後に取得した財産
- 自由財産拡張となった財産(裁判所が所有を認めた自由財産範囲外の財産)
- 破産管財人が放棄した財産(換金するのが難しい財産)
借金をゼロにしてもらい、生活を立て直したいときに有効なのが自己破産です。
自己破産の方法について以下でご紹介いたします。
同時廃止事件
同時廃止事件は、財産の分配が行われないため破産管財人が選任されない破産手続です。
破産手続開始決定と破産手続廃止決定が同時に行われます。
管財事件と比べると手間のかからない同時廃止事件のほうが早めに終了します。
同時廃止事件が終了するまでの目安は3~4か月です。
同時廃止事件の費用
自己破産では裁判所への予納金が発生します。
同時廃止事件の予納金は、以下をご覧ください。
手数料 | 官報公告費 | 郵券 | 引継予納金 |
1,500円 | 1万1,859円 | 4,200円 | なし |
※東京地方裁判所の場合
同時廃止事件の場合、比較的少額な費用で自己破産できます。
裁判所によって費用が異なるため、事前に確認しておきましょう。
管財事件
管財事件は財産の分配が行われるため、破産管財人が選任される破産手続です。
管財事件は以下の流れで進みます。
- 自己破産の申立
- 裁判官による面接(同時廃止事件・管財事件を決定)
- 破産手続開始決定
- 破産管財人の選任
- 破産管財人による財産調査や処分
- 債権者集会
- 債権者への配当
- 免責許可決定
管財事件の場合、一定以上価値のある財産(99万円を超える分の現金や不動産など)は差し押さえされます。
差し押さえとなった財産は処分され、債権者への配当に回します。
同時廃止事件と比べると、管財事件の手続は煩雑です。
そのため、管財事件が終了するまで6か月ほどかかる場合があります。
保有している財産によっては、管財事件の終了まで1年ほどかかると考えてください。
管財事件の費用
以下のように、同時廃止事件と比べると管財事件の予納金は高額です。
手数料 | 官報公告費 | 郵券 | 引継予納金 |
1,500円 | 1万8,543円 | 4,200円 | 50万円~ |
管財事件となると50万円以上の費用がかかります。
以下のように、引継予納金は借金総額によって変わります。
借金総額 | 引継予納金(個人の自己破産) |
~5,000万円 | 50万円 |
5,000万円~1億円 | 80万円 |
1億円~5億円 | 150万円 |
5億円~10億円 | 250万円 |
10億円~50億円 | 400万円 |
50億円~100億円 | 500万円 |
100億円~ | 700万円~ |
※東京地方裁判所の場合
続いて少額管財事件についてご紹介いたします。
少額管財事件
少額管財事件は引継予納金を低くした破産手続です。
破産管財人が選任されても、比較的少ない費用で自己破産できます。
通常の管財事件より手続が簡略化されており、3~4か月ほどの期間で少額管財事件は終了です。
少額管財事件の費用
少額管財事件の予納金は以下をご覧ください。
手数料 | 官報公告費 | 郵券 | 引継予納金 |
1,500円 | 1万8,543円 | 4,200円 | 20万円~ |
※東京地方裁判所の場合
ただし、少額管財事件にしてもらうには弁護士を代理人とし、地方裁判所に申立しないといけません。
司法書士だと自己破産の依頼はできても少額管財事件を扱うことはできません。
一定以上の財産を持っており管財事件になりそうな方は、弁護士に自己破産の手続を依頼するとよいでしょう。
事務所によって異なりますが、弁護士費用の目安は少額管財事件で40万円~50万円ほどです。
自己破産すると官報に掲載されてしまう
自己破産には名前や住所などが官報に掲載されるデメリットがあります。
自己破産の場合、官報に掲載されるタイミングは以下の2つです。
- 破産手続開始決定したとき
- 免責許可決定したとき
官報には紙版とインターネット版があり、破産者マップでは紙版の官報を利用していたと考えられます。
インターネット版官報では、直近30日分であれば無料で破産者データを調べられます。
なぜ国が発行する機関誌、官報では破産者を掲載しているのでしょうか。
それは自己破産された債権者への影響が大きいからです。
管財事件であれば、処分した財産からの配当が期待できます。しかし、貸した金銭すべて回収できるとは限りません。
同時廃止事件では財産の処分や配当は行われないため、処分した財産からの配当は期待できません。
連帯保証人がいる場合、債権者はその連帯保証人に請求できますが、
連帯保証人に支払い能力がないときは、その連帯保証人も自己破産する場合があります。
破産者マップには後継のサイトが存在した?
2019年3月、破産者マップ係長のツイッター上で閉鎖が発表されましたが、後継サイトが出現しており、
どちらの後継サイトでも、インターネット版官報のデータを自動取得していたと考えられます。
モンスターマップ
破産者マップの閉鎖よりおよそ6か月後、2019年9月にサービス開始となったのがモンスターマップです。
破産者マップ同様、モンスターマップでも破産者データを公開していました。
2020年7月、2つの破産者データサイトに対して個人情報保護委員会が停止命令を出しており、モンスターマップは停止命令を受けた可能性が大きいです。
停止命令に応じない場合、刑事告発する方針でしたが2020年8月にモンスターマップは閉鎖となりました。
自己破産・特別清算・再生データベース
自己破産・特別清算・再生データベースも破産者マップの後継サイトです。
Googleマップではなく、Yahoo!地図を利用していたとされています。
削除申請したときに数万円の仮想通貨を請求されたといったニュースが流れているため、悪用目的で
開設された可能性の高いサイトです。
しかし、2020年8月で自己破産・特別清算・再生 データベースも閉鎖しています。
これは2020年7月、個人情報保護委員会による停止命令を受けて閉鎖された可能性が高いです。
破産者マップのその後!現在も存在する?
破産者マップはその後、どうなったのでしょうか。
存在しているのか、魚拓やミラーサイトがあるのか気になる方は以下の解説を参考にしてください。
現在は存在しない
破産者マップはすでに閉鎖されており、現在では存在していません。
サイト開設から閉鎖までの時系列をご覧ください。
2018年12月頃 | サイト開設 |
2019年3月 | 1時間あたりのアクセスが230万(破産者マップ係長のツイートより) |
2019年3月 | 個人情報保護委員会が行政指導 |
2019年3月 | 被害対策弁護団が立ち上がる |
2019年3月19日 | サイト閉鎖の報告 (破産者マップ係長のツイートより) |
サイト開設から閉鎖まで、およそ1年3か月かかっています。
しかし、2019年3月に入ってから急展開で閉鎖となりました。
魚拓やミラーサイトは?
サイトのスナップショットを保存できるのがウェブ魚拓です。
削除後のサイトであっても、ウェブ魚拓に保存されていれば閲覧できます。
しかし、ウェブ魚拓にある破産者マップは正しく表示されません。
破産者マップとしては機能していない状況です。
ミラーサイトではサイトの全部または一部をコピーし、運営者の許可のもとで公開しています。
しかし、破産者マップのミラーサイトは存在していません。
自己破産、個人再生はバレてしまう?
個人再生も自己破産同様、官報に掲載されます。
しかし、自己破産や個人再生は周りにバレにくい裁判手続です。
なぜ周りにバレにくいのか、その理由を紹介していきましょう。
官報を一般の方が閲覧することはほとんどない
インターネット環境とパソコンがあれば、すぐにインターネット版官報を閲覧できます。
しかし、インターネット版とはいえ、官報を閲覧する一般の方は少ないです。
そのため、官報から自己破産や個人再生がバレてしまうと過度に心配しなくてもよいでしょう。
行政による規制の強化
2020年6月、「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」が国会で可決しました。
「違法または不当行為の助長、または誘発する恐れがある方法で個人情報を利用してはいけない」といった内容が追加されています。
法改正により、破産者データサイトへの規制強化が期待できる状況です。
ただし、破産者データサイトの運営者は個人情報保護法を守らないため規制に従うかどうかは未知数です。
無料版官報の画像化
現在のインターネット版官報では画像化したPDFで公開しています。
個人情報保護の観点から画像化した関係上、テキスト(特定の名前や住所など)での検索ができません。
官報にある膨大なデータの中から特定の破産者を探すため、すみずみまで確認する人は少ないでしょう。
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まとめ
破産者マップについて、以下の内容を中心に解説してきました。
- Googleマップ上のピンを押すと破産者データが表示される
- 官報より破産者データを取得していた
- 個人情報保護法の違反、プライバシー侵害の可能性が高い
- 2019年3月、破産者マップが閉鎖
- 破産者データ、削除申請フォームのデータ、本人確認書類の削除を約束した
2020年8月、後継サイトのモンスターマップと自己破産・特別清算・再生 データベースもすでに閉鎖しています。
自己破産はもともと周囲にバレにくい裁判手続です。官報から一般の方にバレるケースは少ないでしょう。
ただし、100%周囲にバレない訳ではありません。
債務整理を検討している方は上記デメリットなども把握した上で、弁護士に相談しましょう。